これは戸田和幸が以前所属していた事務所のホームページに記載されていたコラムです。海外でプレーしていた当時の戸田和幸の気持ちが書かれています。今現在の戸田と照らし合わせながら読んでいただければと思います。
過去のコラムのため更新はありません。

南アフリカ遠征について

2003/08/03

遅くなりましたが南アフリカ遠征についての感想・手ごたえなどについてお伝えします。

7月の23日から31日までトットナムは南アフリカへと遠征してきました。行われた試合は2試合。結果は2-1での負けと2-0での勝利と1勝1敗でした、僕は1試合目の試合に出場し、相手は「オーランド・パイレーツ」というこの国のチャンピオンチームでした。

初めてのアフリカの地でのプレイでしたのでどんなものかと思っていましたが、スタジアムはとても大きくて立派なものでした。しかし、ピッチの状態がやはりいいものではなく、芝はとても長く雑草のようなもので地面はとても硬く、そして凸凹していましたからなかなか苦労しました。そして観客ですが、みんなトリッキーなプレイが大好きで、そういったプレイと共に踊りながらホーンのようなものを鳴らしながら応援していました。場所や民族が違えば全てが違いますが、やはりアフリカはアフリカといった応援のスタイルで、その中でプレイできたのも貴重な経験になりました。

さて試合についてですが彼らはとても素早く、また技術もありとても厄介な相手でした。うかつに取りに行くとそれこそ簡単にかわされてしまいます。ですから個人はもちろんチームとして、いかに追い込んでいって囲い込んで、ボールを奪えるかということが大きなテーマでした。

先にチームの全体的な印象について述べたいと思います。試合に臨むにあたってのテーマであったディフェンスについてですが、意識はみんなあったと思います。しかし、局面局面での1対1で彼らの個人技にかわされる場面が多く、狙い通りに進められるシーンはあまりありませんでした。彼らはアフリカ人ですから、やはり後ろから繋いでゲームを作ってくるスタイルでした。ヨーロッパのチームのようにロングボールをフォワードにあてて、そのこぼれ球を狙うといった戦略がありません。ですから、逆に前からきちっと追い込んでいければ守りやすいはずなのですが、その「前から」が上手に出来なかったために、そこをうまく突破され、数的に優位な状況を作られる場面が多く、どうしても低い位置、要は自分達のゴールに近い位置で守る時間が多かったです。

サッカーを問わずスポーツは、得点を競うものですからもちろん攻めなければ点を奪うことは出来ません。しかし相手がある以上、常に自分達が攻められるわけはなく、相手も同じように攻めてきます。相手に攻められる時間が多いほど、自分達が攻める時間は短くなります。自分達が攻める時間を多く持つことが点を奪い勝利する確率を高くします。同時に相手に得点を許す機会を減らすことになります。何のために守るのかといえば、それはもちろん相手に点を与えることを防ぐためです。つまり、別の言い方をすれば「点を取るために守る」わけです。チームとして効果的な守りをし、相手のボールを奪いゴールする、そのために守るのです。高い位置から、もしくは狙いどころを絞ってボールを奪う、それは点を取るためです。守って終わりなのではなく、そこから攻めにつながっていくものであり、「守りと攻め」「攻めから守り」は一つでなければなりません。ですから奪ったボールは簡単にクリアーしてはいけないし、奪われたボールはその瞬間に奪い返しにいかなければなりません。2つは1つなのであって、その間が「プツっ」と途切れるものであってはいけないのです。

話が脱線しかけましたが、我々が何故組織的に狙いを持って守るのかというと、それは点を奪うためです。そのためには自分達のゴールから遠いところ、相手ゴールに近いところでボールを奪うことが、得点の確立を大きくなものにするのです。でうから、なるべくなら前でボールを奪いたいわけです。自陣で奪ったとしても、そこから相手のゴールまでは距離もあり、時間もかかります。これは、もちろん基本の話であり、戦略としてあえて攻めさせておいて、カウンターを狙ったりといろんなパターンが存在しますし、基本的な考え方として「前」で奪うほうがよりチャンスが増えるということです。

そのために我々は組織的に守ろうとトライしたわけですが、話したとおり上手くはいかず最終ラインのところで奪うことが多くなり、そこから攻めなおすという時間が多かったです。お互いにボールを持っているときは、 そんなに簡単には奪われないので、逆に「守りから攻め」という形からのビッグチャンスはありませんでした。

さて我々の攻めはどうだったかというと、前半に限って言えばいいチャンスを作ることができました。特に左サイドから相手の裏を奪い、効果的なクロスを上げたり、そこからワンツーでシュートをしたりといいプレイが多かったです。詳しい話は後に回しますが、後半に入ると日程の厳しさも影響し、我々の動きは止まり相手に支配されゴールを奪われ、その後は相手にピッチの上で「ダンス」までされてしまい試合は終わりました。

非常に残念な試合でした。我々は招待を受け長い時間をかけて出かけ、相手はチャンピオンチーム、イギリスの代表としてプレミアリーグの代表として何が何でもいいプレイをし試合に勝ち、「さすがトットナム」と言わせなければならない歴史と義務がありました。ですから内容もさることながら「勝つ」ことが出来なかったことはとても悔しいことでした。

さて全体の話は終わって個人的な感想に移ります、ここまで試合を重ねてきましたが試合を重ねていくごとに回りとの連携・個人的なパフォーマンス両方において確実にステップアップしてきましたが、この試合においてもいいプレイがたくさん出せました。但し、70分までですが・・・。

この試合は3-5-2で闘いましたが、僕は左のボランチでプレイしました。同じ左サイドのウイングの選手がドリブルが上手く、足も速いアレックスのような選手(彼よりは「裏」に走ります)がプレイしたので、彼をいかに生かすかが自分の中のポイントになりました。もちろん他の前後左右の選手との関係もとても重要ですが、「彼をどう生かすかということのために他の選手との関係が必要になる」という認識でした。「どういうボールの流れで」、「どういう位置関係で」、「どういうタイミングで『彼』にパスを出すべきか」、それがうまくいけばチャンスは自然に生まれるだろうと思いました。

結果からいうと、この試合殆どのチャンスが左サイドから生まれ、オフサイドも含め、ぎりぎりのタイミングで彼が裏で走るスペースにパスを出すことも出来ました。逆に彼を活かしてくるのではという相手の「裏」を取って、他の選手を狙ってチャンスを生み出したりと、もう少しで得点になりそうな場面を作り出すことが出来ました。得点にならないのが僕らしいですが・・・。

ディフェンスがボールを回している段階で周りの選手の位置を確認し、まず誰にボールが入りそうなのかを予測します。もしくはどこでどのタイミングでボールを受けて、どこにまたパスを出せるかというイメージを持つ。または自分がどこに動けば、他の選手がいい状態でボールを受けれるか、頭の中で考えます。そ して出たボールに対してサポートに入るといった動きに関しては、試合のペースに遅れることなく、いいリズムでやれています。ワンタッチでさばくところ、ドリブルで運ぶところといった判断も、やみくもになんでも速くではなく、きちっと出来ていると思います。右から左への流れの中で、いいタイミングでボールを受け、次に展開することも問題なく出来ていますし、逆に左サイドで小さくし、敵を寄せておいて逆サイドのスペースに勝負のサイドチェンジをしてみたり、良いトライが出来ています。

一番自分で良いプレイだと思ったものはというと、またまた長くなります。ディフェンスがボールを回していました。中盤を組んでいたレドナップが一度ボールを受けに行きました(センターサークル辺りで)。彼には後ろから敵がプレッシャーをかけてきたので、彼はそのボールをそのディフェンダーに返し、ポジションをずらしました。その瞬間に僕がその彼が「空けた」スペースに入り、もう一度ボールを受けました。もちろんフリーで前を向ける状況です。そしてその瞬間敵はみんな左サイドを意識したと思います。何でかといえば、それまで何度となく左サイドを使って崩していたからです。その瞬間に僕は自分で判断したかといえば正直分かりませんが、僕の「目」には中央をゴールに向かって走っている選手が入りました。なんでそこが見えたのかはよく分かりませんが、そこをつねに意識し毎日練習してきたからでしょうか?とにかく僕にとってはとてもいいことでした。そしてそこを目掛けて走ったその選手の判断、ポイェというベテランの選手ですが「さすが」だと思いました。敵の「目」は全て左サイドに向いていたところで前を向いた僕は迷うことなく、ポイェに左足で浮き球でパスを出しました。ディフェンダ?の裏を取ったのですが、ぎりぎりのところで触られてクリアーされてしまいました。惜しかったですね全く。

だんだん自然と周りとの連携も取れてきはじめ、良いプレイの中に絡めるシーンが増えてきて、自信も増してきています。90分高いレベルで続けられることが最大の目標ですからまだまだ道は遠いですが、やっとスタートできたかなという感じです。

ディフェンスに関してもこと1対1ではきちっと対応しファウルも含めて突破されることはありませんでした。いい読みでインターセプトもしましたし、押し込まれる中サイドのカバー最終ラインに戻ってのディフェンスチームのコンセプト自体を蘇らせることまでは出来ませんでしたが、そのなかで最後のところまで、粘り強く守れたと思います。

前の選手を「声」できちっと動かし、守りをオーガナイズすることまでは出来ませんでしたから、またまた次に課題として持ち越しです。それにあと一歩のところでボールを奪えそうな場面がいくつかありましたが、ここで奪えるか奪えないかで評価もまたがらっと変わるはずです。体の問題、守る技術の問題両方ですが更なる成長が必要です。

後半の半ばを過ぎてからは足にきてしまい、更にタックルをした瞬間に若干の違和感を覚え、その後はきちんと走れなくなってしまい、その時点で僕の試合は終わってしまいました。何故疲れて動きが止まってしまったのかについてはいろんな要素があるとは思いますが、結果から言うとその後の試合は休みました。そしてイギリスに帰ってきてからの練習中にふくらはぎを肉離れしてしまいました。

いいプレイをいい集中力によって続けてこれていたのでこれ以上残念なことはありませんが、幸いそこまでのものではないようです。不幸中の幸いでしょうか。開幕まで2週間ちょっと残りのプレシーズンは休まざるを得ませんが、プレイするのと同じもしくはそれ以上の気持ちで治療に向かい、一日も早く復帰することだけを考えて毎日を過ごします。ここまでやってきたものが消えるわけでは決してありませんからチャンスがあると信じて、いち早く復帰し必ずピッチで活躍します。しばらくみなさんにはご心配かけますがこれもチャンスと捉えてもう一度トレーニングに励み、もう一つ上の力強い体とメンタルを作り上げる期間にしたいと思っています。

なかなか人生思うようにはいきませんが、きっとそれが人生なのでしょうでしょう。苦しい時にどれだけ歯を食いしばって耐え前を向いて頑張れるか、それがその人の強さ逞しさにつながっていくと信じて、また明日から頑張ろうと思います。なんのために頑張りなんのために今苦しむのかそのことを絶対に忘れることなく、このサッカーが出来ない時間をサッカーをする時のために最高のものにすると誓って終わります。

それではみなさんも怪我と病気には十分気をつけて。

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